書籍紹介『アニマルスピリット 人間の心理がマクロ経済を動かす』

シラー教授は2013年に、アカロフ教授は2001年にノーベル経済学賞を受賞。

ともにノーベル賞を受賞した、主流のなかの主流の二人が、主流派経済学のあり方を批判しつつ、「人間」を軸に据えたマクロ経済学が必要だと説いた意欲作。

偉大な経済学者ジョン・メイナード・ケインズが代表作『雇用、利子、お金の一般理論』で提示したアニマルスピリットと、経済学の新しい分野である行動経済学の成果を組み合わせて、危機に陥った現実経済の説明を試みる。

「金融学とは金儲けのための学問ではない。人間行動の研究である」というシラー教授の基本思想どおりに、人間のアニマルスピリット(衝動、血気)を安心、公平さ、腐敗と背信、貨幣錯覚、物語といった要素に分解して、それぞれがアメリカの有名な経済現象にどう関与していたかを紹介していく。

たとえば、
・1991年ころのS&L危機
・2001年ころのエンロン問題
・2007年ころのサブプライムローン問題
などだ。もっと古い経済問題では、1890年代の不況や、1920年代の過熱経済、1930年代の大恐慌も分析の対象となっている。本書自体が、説得力のある一つの物語となっているようだ。

本書が刊行された2009年当時、金融危機で途方に暮れていた当局に対して、本書は独自の分析と鋭い政策提言を行い、注目を集めた。専門家ではない人も読めるタイムリーな経済書として、世界各国で読まれた。

日本でも、週刊ダイヤモンドの2009年ベスト経済書ランキングで、堂々1位に輝いている。

一流の経済学者がどのように経済を見ているかを追体験できる本。

【主な内容】
第I部 アニマルスピリット
 第1章 安心さとその乗数
 第2章 公平さ
 第3章 腐敗と背信
 第4章 貨幣錯覚
 第5章 物語

第11部 八つの質問とその回答
 第6章 なぜ経済は不況に陥るのか?
 第7章 なぜ中央銀行は経済に対して(持つ場合には)力を持つのか?
 第8章 なぜ仕事の見つからない人がいるのか?
 第9章 なぜインフレと失業はトレードオフ関係にあるのか?
 第10章 なぜ未来のための貯蓄はこれほどいい加減なのか?
 第11章 なぜ金融価格と企業投資はこんなに変動が激しいのか?
 第12章 なぜ不動産価格には周期性があるのか?
 第13章 なぜ黒人には特殊な貧困があるのか?
 第14章 結論

 

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書籍紹介『信用の新世紀 ブロックチェーン後の未来』

貨幣経済が衰退する」──電子マネービットコインといったデジタルな通貨に置き換わるという話ではありません。「マネー」そのものが衰退するのです。読者のみなさんはそんなことはあり得ない、と思うかもしれません。しかし、貨幣は人と人との信用のうえに成り立っています。言わば、貨幣は信用の「代用品」です。もし代用品にすぎない貨幣のもつ力が失われていけば、信用が本来のかたちで息を吹き返してきます。そして、著者はそんな日が到来するのも、それほど遠くないと考えているのです。

 では、どうして貨幣の力が弱まるのでしょうか。さらに、貨幣の力が弱まり、信用が本来の姿を現すときには、いったい、どんな社会・技術が現れるというのでしょうか。

 本書は、インターネットと社会の研究者である著者が、ビットコインの中核技術であるブロックチェーンの仕組みを俎上に載せて、「信用」の問題を考察し、実際に起こるかもしれない近未来の社会や技術の変化を予見する一冊です。デジタル通貨への期待が過熱するなか、冷静に技術的課題と向き合い、新時代の経済システム像を展望します。

【目次】

プロローグーー貨幣経済は衰退しました

第1章 ブロックチェーンって何だ?

 注目されるブロックチェーン

 ブロックチェーンとブラウン管は似ている?

 「証明」の手段としての新聞ーーすべてはタイムズ紙の見出しから始まった

 ビットコインの「問い」と「補題」 ほか

第2章「信用」の歴史ーー口約束から契約へ、契約からコードへ

 心の理論

 原始の約束

 全体主義的農耕の始まり

 職業人という名の奴隷 ほか

第3章「信用」と「裏切り」ーービザンチン将軍問題をめぐって

 ビザンチン将軍問題の背景

 ビザンチン将軍問題とはどんな問題か

 ビザンチン将軍問題を解く ─ 司令、攻撃やめるってよ ほか

第4章 ブロックチェーンの可能性と不可能性

 応用可能性が花開いた

 続々と行われる実証実験ーー醒める狂騒

人類史に残る新しい会社の出現

 地球規模オペレーティングシステム ほか

第5章「信用」の新世紀 ─ 社会はどこに向かっていくのか

 「貨幣経済は衰退しました」のリアリティ

 貨幣と会計の変化

 「貨幣」と「専門分化」と「国家」が三つ巴で衰退する

 限界費用ゼロかつ専門未分化社会の衝撃 ほか

エピローグーーフレンズ

 

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書籍紹介『雇用・利子および貨幣の一般理論 ─まんがで読破─ (まんがで読破)』

第一次世界大戦で疲弊しきったイギリス経済は、失業率25%という大不況にあえいでいた。しかしこの国家の危機にも、経済学の主流である「古典派経済学派」は古い価値観にとらわれ、「いずれ時が解決してくれる」という姿勢から離れない。経済学者として、また財務官僚として一級の感覚を持っていたケインズは、この状況に疑問を持ち、そしてひとつの結論に達する。「不況が経済理論どおりに解決しないのは、イレギュラーな事態だからではない。 経済学そのものが、発展した社会から取り残されているからだ!」ケインズは全精力を傾け、現代の社会に対応した経済理論を開発する。それこそが、いまや経済学の教科書となった『雇用・利子および貨幣の一般理論』なのである。経済学を「近代」から「現代」へ一気に進化させた革命的な一書、その理論は「不況の経済学」とも言われ不況の時こそ彼の経済学は輝きだす。

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新時代の貨幣『仮想通貨はどうなるのかⅢ』

基軸通貨ドル

基軸通貨は現在ではアメリカの発行するドルが担っているとされています。実際基軸通貨としての力がアメリカ・ドルにあるのかは別としても世界で最も信用がある貨幣はドルだと言われます。

 

ドルが基軸通貨として成立するまでは金(ゴールド)が世界の基軸通貨としての役割を担っていました。

金本位制が設定され、ドルと金を固定する事などで金の保有量を元に紙幣を発行する制度(ブレトンウッズ体制)が世界的に採用されておりましたが金本位制が崩壊する事になった1971年のニクソンショックなどによりその後世界は変動相場制に突入していきます。

金は世界の基軸通貨の地位をドルに明け渡す事になりました。ドルの弱体化は叫ばれていますが現在に至るまでドルは基軸通貨としての地位を守っているという見方をするのが大勢です。

 

ドルという紙幣はアメリカが統治する、関係の強い国では自国通貨の価格の指標として用いられます。日本でも円相場を考える際には1ドル=〇〇円、というようにドルを用いて考えるのが一般的な事からも分かります。

 

そのように考える理由はドルが世界の基軸通貨として価格が大きく変わらない(紙幣が紙クズになる事はない)と思われている為でもあります。しかし、ドルは実際変動相場制に突入してから大きく価格を変動させてきました。様々な理由があるものの、基軸通貨であるドルの価格が変動してきたのは事実です。

 

ニクソンショック当時の360円からドル価格は下落しており2017年12月現在では約120円付近で推移しています。もちろん近年では100円前後を推移している為に今後落ち着く可能性はありますが、ドルの価格形成の元はアメリカにある事は間違いありません。

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アメリカの経済力

紙幣の価値は経済力や軍事力といった国力に基づいて生じるものとの見方は過去からされています。つまり現在の基軸通貨はアメリカの国力によって形成されているという事です。アメリカの国力が安定していれば基軸通貨は安定する事になりますし不安定であれば基軸通貨も不安定な動きをする事になります。

 

基軸通貨が不安定になれば世界経済は不安定になります。特に対アメリカに貿易を行っている国では経済に大きな不安定がもたらされます。日本も例外ではありません。ドル価格が安くなる事は自国通貨高になるという事なので輸出産業には大きな痛手になる事になり貿易黒字も減少する可能性があります。

 

このように考えるとすれば多くの国がアメリカという一国に経済の命運が握られているとも言えます。もちろんアメリカやその他の国は為替が大きく一方向に変動しないよう金融政策を打ちますがその効果も1ドル=約70円まで下落してしまった過去を見ればその限界を感じます。

 

金(ゴールド)であればその価格は一国に握られている訳ではありませんが人の需要と供給に大きく左右される事・金融政策を金自体で行えない(採掘量が有限である)事から不安定になってしまう可能性があります。

 

仮想通貨と基軸通貨

このように考えた場合、仮想通貨が基軸通貨となるかどうかは為替の安定が求められる事が分かります。

ビットコインなどの中央管理者のいない仮想通貨はどちらかと言えば金に似ています。発行量が定められており、一国にその価格の動向を握られている訳ではないからです。

 

ただし、金融調整機能はもちろんありません。ドルなどの紙幣のようには発行量を増やしたり抑えたりして安定をさせる事ができません。

つまりビットコインは世界共通ですが基軸通貨としての機能は果たす事ができないと言えます。

 

ただし、これが発行主体のいる仮想通貨である場合はどうでしょうか。例えばリップルXRP)という仮想通貨があります。リップルリップル社が発行しており、発行上限は1000億XRPと定められていますがこの上限を減らす事・増やす事はリップル社の一存で可能です。

 

となれば一定の金融調整機能があり、且つ世界共通で利用できる通貨というのは存在する事が分かります。これは歴史にあったような民間の銀行が紙幣を発行しそれを人々がお金として扱っていた事を想起させます。

となれば信用の増幅が起こる可能性があります。民間によって発行された仮想通貨がお金となればその価格は発行主体の信用が元で価格が形成されていきます。価格が上昇(需要が上昇)するという見込みがあれば他の資産(法定通貨)を売って仮想通貨を購入します。

そして発行主体が利益を上げるのであればそれに伴い発行主体の株価も上昇する事になり(発行主体が株式会社であれば)仮想通貨で株式を購入する事になり結果信用だけが増大していきます。これはミシシッピー会社が行っていた紙幣発行を想起させます(ジョン・ローのミシシッピー会社計画についてはこちら南海バブルと仮想通貨の相違点 <仮想通貨はバブルか?>で解説しています。)。

 

歴史から分かるように結末はバブルの崩壊です。つまり民間が発行する仮想通貨が基軸通貨とはなり得ません。利益を追求してしまうからです。利益ではなく相場の安定をいつまでも継続できる団体による仮想通貨の発行が基軸通貨たり得ると考える事ができます。

 

一つの国が仮想通貨を発行してもそれは法定通貨と同様で一国が全ての国の経済を握る基軸通貨を生み出すだけです。だとすれば世界が共同して仮想通貨を発行する。これが仮想通貨が基軸通貨になる一つの解です。ただ、これは前回記事で述べたように世界が「最適通貨圏」でなければまた経済危機が生じます。

 

仮想通貨の未来

このように考えると仮想通貨は世界で協力して経済危機・格差をなくすためのきっかけとなるツールになるのかもしれません。今までの通貨という固定された概念を突破し、世界中でより自由な経済・より貧困のない社会を形成する為には国という概念を突破しなければならない事が貨幣の実態から仮想通貨を見る事で考察する事ができます。

 

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新時代の貨幣『仮想通貨はどうなるのかⅡ』

最適通貨圏とは

最適通貨圏は「単一の共通通貨を利用する事が適する地域」の事で、1999年にノーベル経済学賞を受賞したロバート・マンデル氏の理論「OCA:Optimum Crrency Area」が代表的です。

 

最適通貨圏に属する地域では共通の単一通貨を用いる事により、活発な経済活動(貿易や投資)が行われるので最適な資源配分が実現し効率化された経済活動が行われるとされます。欧州の共通通貨であるユーロが導入される前の1990年代にこの理論は活発に議論されておりユーロ導入の一因ともなりました。

 

共通で単一通貨を利用する事で為替レートの変動が無くなり、為替に対するリスクが軽減されます。例えば自国通貨高になってしまうと貿易において輸出が制限されてしまう等のリスクが無くなり、経済を安定的に回す事ができるようになります。

このようなメリットがある一方で逆に輸出を増やしたい時に通貨安になるような金融政策を打てなくなります。例えば自国の金利を上げて通貨を外国に購入してもらい価格を下げる(通貨安を招く)事などは共通通貨を用いている為にできません。

 

ヨーロッパで導入されたユーロはヨーロッパが「最適通貨圏」であるとの考えも一因となり導入されました(もちろんそれだけではありません)。このような最適通貨圏という概念を知る事で世界共通通貨である仮想通貨がどのような地域で利用されるべきなのかを考察できます。

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ヨーロッパとユーロ

ヨーロッパで導入された異なる国の単一共通通貨であるユーロですがユーロ導入後、それまでの一国一通貨という時代よりも経済が安定しているかは疑問です。もちろんまだ破たんしたわけではないので断定はできませんが。

最適通貨圏という観点から見るとヨーロッパが最適通貨圏に当たるかどうかは「経済の開放度」が条件となると言われています。つまり共通の通貨を利用するにあたり、異なる経済状況の各国がそれを安定利用するには資本・金融市場の流動性が求められます。

 

A国が経済的に危機に瀕した際に資本がA国に流入する事、労働力・生産力が持て余している隣国から移動する事で安定を取り戻す、という一つの例が挙げられます。

このように経済的な不安定を市場が開放される事で解決する事が共通通貨を利用する場合には求められます。

 

しかし、先に述べたように共通通貨を導入した場合金融政策を打ち出す事はできなくなります。通貨を発行して経済を活性化させる事もできなくなります。ですのでその方法以外で流動性を保つ必要が出てくるのです。

 

ヨーロッパに関して言えば資本・金融市場の流動性は高くないとされています。というより異なる国では流動性が金融政策無しに保たれる事は難しいと考えます。各国ではそれぞれに異なった政策を持っていて、富の配分も独自に行います。その為、仮に失業したとしてもその国では社会保障を行ってくれるので、わざわざ遠くの国へ働きに行く必要は無いケースが多くあります。

資本主義では富の再分配が原則ですのでそのような社会保障を行わない場合は国自体が運営できなくなってしまいます。

 

ヨーロッパでは日本とは異なり陸続きなので労働を求めて他国へ移動する事が容易、且つ文化・生産的背景もそれぞれの国が似ているので容易、といった事もユーロ導入を進める一つの要因となっていましたが現状これは難しい問題として今もなお課題となっています。

 

最適通貨圏ではこのような一時的な経済不安定(非耐性ショック)も単一通貨を利用すれば徐々に改善されていくと言われますが2010年のギリシャ危機などを見ていると各国の安定は各国の努力や経済力によるものとも見れます。

ギリシャ危機については本題とは逸れてしまうので言及しませんが金融政策を行えないギリシャでは財政赤字などで世界を巻き込む経済危機を巻き起こしました。

 

このように共通通貨を利用する事で世界の経済が安定化するかはとても重要な問題で、もし共通通貨を利用する場合は国に依存しなければいけない現代においては、国の経済状況によって国民だけではなく世界的な経済危機になってしまうのです。

 

世界共通の仮想通貨

このように最適通貨圏という概念を見てみると世界共通通貨である仮想通貨を利用する場合、経済の安定はなかなか困難である事が分かります。

仮想通貨が世界で利用されるのには価格の安定が求められます。例えばビットコインを100BTC保有している時に1BTC=100万円だったものが次の日に1BTC=1万円になってしまった場合、生活を営む事ができなくなります。

 

全ての国で、全ての商品をビットコインで購入できたとしても商品(資源)は有限ですので商品を多く生産できる経済大国に小国は勝つことができず国民は困窮してしまいます。つまり格差が広がる事になります。これは国内での経済格差でも同様です。商品を多く生産⇒保有ビットコインの上昇⇒富の再分配問題、となります。再分配は現状で上手くいっていない事は貧困者問題で明らかです。

 

このように世界で共通して利用する場合には為替調整機能を持たないビットコインはヨーロッパで導入されているユーロと同様かそれ以上に(ユーロにはECBという金融政策機関が存在する)一つの経済不安定国の影響を受けやすくなる、且つ格差を広げます。

 

仮想通貨は通貨になるか

仮想通貨(ビットコイン)を世界の通貨として利用するにはこのような理由から少し困難です。仮想通貨が仮に世界の通貨となるのであれば先に述べたように格差を広げてしまいます。格差が広がるという事は暴動・貧困・国の運営にとって問題となり私たちの問題になる為多くの人がそれを防ごうとするでしょう。

 

つまりこのように考えた場合、仮想通貨だけの世界というのは難しく法定通貨との共存は避ける事が出来ません。国という概念が無くなれば別ですがそれも多くの困難が待っています。

 

仮想通貨の最適通貨圏はどこにあるでしょうか。最適通貨圏はインターネット上にあると私は考えます。インターネット上には国が存在しません。物理的な障壁はありません。つまりインターネットで活動する時にそれを促進するのが仮想通貨であると言えます。ただ、現状では高い価格変動率と課税(日本在住の場合。ただし多くの国が課税対象とすると予想)の為それすらもままなりません。それらの問題を解決するにはまだまだ課題が山積みです。

 

インターネット上のお金である仮想通貨はこのような問題を抱えている事が、貨幣の実態から考察する事で見えてきます。

 

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書籍紹介『公共貨幣』

〔『公共貨幣』 山口薫 東洋経済新報社より以下転載〕

【p3 アダム・スミスから始まる過去250年にもわたる経済学は、
マネー(貨幣)をその研究の対象としてこなかった。マネーがタブー視されてきたのである。】

【p6 貨幣にまつわる疑問は次から次へと湧いてくるが、
残念ながらどの経済学の教科書を見ても、そうした疑問点を解明したものは皆無である。
そう、経済学の父と言われるアダム・スミス以来、貨幣の科学的解明は
タブー視されてきたのである。
現在も活躍中のあるノーベル経済学賞受賞者は、かつて
「大学での職を得ようと思えば、このイシューには触れない方がいい」
と博士課程の学生にアドバイスをしたといううわさを英国のある経済学者から
直接聞いたことがある。

このイシューとは、マネタリー・イシュー(貨幣問題)のことである。
こうしたことを知ってか知らずか、大学に勤務の経済学者の多くは保身のために、
現在でもこうしたイシューに一切触れようとはしない。
このイシューに触れたかどうかは定かでないが、
「貴方の経済学は偏っている」
と経済学の講義を突如一方的に外され、2013年の春に大学院教授の職を追われた。】

 

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新時代の貨幣『仮想通貨はどうなるのかⅠ』

貨幣と通貨

貨幣とは「お金」そのものの事を言います。例えば現在、江戸時代のお金を指して「貨幣」と呼ぶ事があります。それに対し「通貨」はある圏内で流通していて物やサービスの交換に用いる事のできる貨幣を指します。

 

江戸時代の貨幣を「江戸時代の通貨」と呼ぶ事は正しいですが現代では通貨としての機能はない為「通貨」と呼ぶ事はありません。現代では日本では日本円が通貨、アメリカでは米ドルが通貨です。また預金なども預金通貨と呼ばれます。預金通貨も現代ではある圏内で物やサービスの交換に用いる事ができるからです。

このように通貨は紙幣などの「現金通貨」と銀行預金などの「預金通貨」に大きく分ける事ができるのです。

 

通貨の基本的機能

通貨の本来的機能は価値の尺度・交換手段・価値保蔵と言われます。

 

「価値尺度」とは物の価値を表す事です。例えば日本円ではリンゴ1個100円や家1軒5000万円などというように物の価値を表す尺度としての機能の事を言います。日本円は例のように「数字+円」でほとんどの物を表す事ができます。

 

「交換手段」は物を交換する時に利用できるかどうかです。この交換の事を「決済」とも呼びます。物と物を交換する物々交換時代では大きな物を持っていく事が大変であったり、需要と供給がマッチする事が必要でしたがお金を物と物の間に入れる事でそれらの問題が解決しました。日本円で商品を買う事ができる、これが交換手段としての機能です。

 

「価値保蔵」は一定期間保存できる、という機能です。生もの(例えば魚などの食べ物)をお金として扱おうと思えば腐ってしまいます。これでは一定期間保存をしておくことができません。日本円は1000円札を持っていれば明日も同様に1000円札として使用できます。このように一定期間保存できるものが通貨としての機能を持ちます。

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仮想通貨は通貨か? 

このような通貨の基本的機能を見てきましたが仮想通貨はどうでしょうか?基本的機能を仮想通貨に当てはめてみます。

 

価値尺度・・・仮想通貨も「数字+単位」で物や商品の価値を表す事ができます。ビットコインであれば〇〇BTCというようにその商品が現在どのくらいの価値なのか一目で分かります。

交換手段・・・仮想通貨は交換手段になり得ます。もちろんまだ普及しているとは言えませんが既に店舗の商品を購入する事ができます。ビックカメラで商品を購入する、ネットショップでビットコイン支払いを行う、というような事ができます。つまり交換手段になる事は充分考えられます。

価値の保蔵・・・仮想通貨は価値の保管は可能です。ブロックチェーンという台帳に記載されていれば現状それを破壊する事はできません。そしてそれを移動する時(所有権を渡す時)は「秘密鍵」という自身にしか分からない暗号が必要です。明日無くなる可能性が低い事、ブロックチェーンが急に破壊される可能性が低い事は仮想通貨が続けば続くほど証明され続けていきます。

 

このように仮想通貨も通貨として機能する事が貨幣論から見ても分かります。ただし、実際に仮想通貨が通貨になるのかには問題があります。

 

圏内とはどこか?

仮想通貨が通貨となる、という事はある特定の圏内で流通・決済の手段として用いられる事を意味します。

ではその圏内はどこなのでしょうか?日本・アメリカ・中国か、はたまた世界か。これが実は通貨として仮想通貨を見た時の最も難しい問題となります。

 

何故なら既に各国では通貨を持っているからです。しかもその通貨は国が発行するものです。もし国の立場であるならば自国の通貨発行権を放棄してまで仮想通貨を決済の手段として受け入れるでしょうか?受け入れるとすれば国の運営はどのようになっていくのでしょうか?ここに仮想通貨の通貨として機能していく問題があります。

 

日本ではビットコインの決済導入が進んでおりますが、全て利用したビットコインは日本円で換算され、購入時点よりも高い価格が付いていた場合には課税対象となります。(一定の条件はありますが)

このように決済を課税対象とされてしまう場合、納税の処理が煩雑になる事・日本円を増やすよりも損失が発生してしまう事で決済利用はあまりメリットがありません。となれば交換手段として日本で機能していくでしょうか?日本という圏内ではなかなか「通貨」となる事が難しいと言えます。

 

であれば世界はどうでしょうか。世界中でビットコインや仮想通貨を利用できる。そうすれば世界中が圏内の決済手段として通貨となり得ます。ですが世界でも日本と同様に国が通貨発行権を中々手放す事はありません。通貨発行権は国を運営していく上で重要な権限だからです。通貨発行権で国は経済調整や財政再建(できるかどうかは別として)を試みます。このように仮想通貨を通貨とする事はどの国にとっても一大事である事が分かります。

 

つまり仮想通貨をどこで使うか、という問題は仮想通貨を通貨とする場合にとても重要な問題になってくる事が分かります。

もし、仮想通貨が本当に通貨として正常に機能するとすればそれはもはや国が無くなった時であるかもしれない、という事も言えます。もちろん国が無くなる事は現実的に考えにくいですが、逆に仮想通貨の力はそこまであるとも言えるでしょう。

 

もちろんこれは仮想通貨を通貨として基本的機能に着目した場合です。仮想通貨は通貨だけではなくゴールドのような安全資産としての機能(特にビットコイン)があるのでこれだけで仮想通貨の存在意義は断定できません。ですが本来の仮想「通貨」の存在意義はなかなか難しいものがある、という事はご理解いただけるのではないかと思います。

 

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